
ようこそ、本の森へ。
私が森番をつとめるヘレナと申します。
森番としては、まだかけだしの身ですが、
みなさんが気持ちよくお過ごしいただけるように
精一杯勤めさせていただきますので、なんなりとお申し付けくださいますよう―。
あの衝撃の異動通告から三日後、新しい勤め先を見にいった。
図書室は、北側校舎の、殆ど日が射さない端にひっそりと存在していた。
ドアを開けると、ひんやりとした空気が足元を流れ、
外はいいお天気なのに、ぼんやり薄暗かった。
見上げるような高い書架に、本がずらりと並んでいて、
誰一人、足を踏み入れたことのない森に迷い込んだ気がする。
締め切られたカーテンの隙間から幽かに射し込む日の光が
床に反射して、木漏れ日のように揺れていたのを覚えている。
それから数日後、覚悟を決めて再びそこを訪れた私は、
この図書室を「本の森」と呼ぶことにした。
そう名づけることによって、ようやく私の新たな図書室運営が
始まったのだ。
これが、我が新天地「本の森」からの眺めです。