2006年05月13日

ゴフスタイン「ふたりの雪だるま」

「読書で遊ぼうアニアシオン」(柏書房)
の訳者である、青柳啓子さんが主催されている「大人のための絵本サロン」に行ってきた。

内容は、大人のための絵本のアニマシオン。
会場は、青柳さんがオーナーをされているステキなイタリアンレストラン
「読書で遊ぼうアニマシオン」の共訳者である佐藤美智代さんが、
私のブログを見てくださり、こういった会があるので、
と紹介してくださったのだ。

フレディさんと娘を伴い、緊張と期待で胸を膨らませながら、出かけた。

テキストは、M・B・ゴフスタイン作 谷川俊太郎訳
「ふたりの雪だるま」(すえもりブックス)

雪だるま

事前に、図書館で本を借り読んでみた。
驚いたのが、本の内容がとてもシンプルだったこと。
パステル画を思わせる素朴で上品な絵の下に、文章が2、3行。
ページ数も少ないので、サラリと読めてしまう。
ひねりも仕掛けも落ちも、なさそうに見える。
アニマシオンにする本にしては素直すぎるのでは?

その疑問に佐藤さんが答えてくださった。
「ヘレナさんがおっしゃったアニマシオンは、
本当に初歩的なものでね、実際はもっと奥が深いんです」

佐藤さんは、ヨーロッパの石造りの建築物を例に挙げて、
日本でのアニマシオンが、インスタントな、
単なるゲーム性を伴った一手法として捉えられ、
一過性のブームで終わってしまうことを危惧されているようだった。

さて、おいしいピザを食べながら、青柳さんの落ち着いた声の朗読を聞く。
読み終えた後、青柳さんから、

「本の中で、あなたの思い出とつながる部分はどこですか?
本の中のこの一行ってのでもいいし、もっと大きな部分でもいいです。
また具体的な事実でもいいし、抽象的につかんだことでもかまいません。
例えば[私はデザートが食べられなかった]という一節から、私にもそんな思い出があったという、単純なことでいいんですよ」という声かけが。


私が一番印象に残ったのは、雪だるまを作った兄妹のお母さんのセリフ。

“そんなことにぐずぐず言ってると
これから生きていくのが大変よ。”

雪が降ったのがうれしくて、雪だるまを作った姉弟だったけど、
その雪だるまが一人で、夜、雪の中に立っているのが悲しくて、
姉である“私”は、夕食のデザートが食べられなかったのだ。

幼い頃の自分も含め、子どもというものは大人から見ると、
つまらないささいな事が気にかかるものである。
そして、自分も含め、世の母親というのは、
そんな子どもを見るとつい言ってしまうのだ。
「なに、つまらないことをくよくよ言ってるの。
あなたの人生には、これからもっと無理難題がふりかかってくる、
というのに・・・」

子どもの気持ちも母親の気持ちもわかって、私はおかしいような
悲しいような。でも、その時、父親が子ども達の気持ちに
寄り添って、もうひとつ雪だるまを作ろうと外に出て行った。
それで、私の気持ちも救われた。

他の方の感想は、様々。
幼い頃の雪の思い出を語る方もいれば、
“大事なのは 新しい雪の上を転がすこと、そうしないと泥や小枝が
くっついちゃうよ”(本文引用)
という“私”のセリフに自分の雪だるまつくりの経験を重ねられた方、
また、ひとりぼっちの雪だるまを見て悲しくなった“私”の
“雪だるま作らなければよかった”というセリフに言及された方。
顔のない絵に、人種や時代を超えた家族の物語としての普遍性を
見事言い当てられた方。

でも、私が印象に残ったのは、同じ学校司書の方の感想。
その方は、ご自分の厳しいお父上のことを話され、
こんな風に遊んでもらったことはなかった。
主人公の“私”が、お父さんには、ごみや落ち葉をくっつけるな、
とは言えなかった、ように、自分もお父さんのすることに意見する
ことなどできなかった、とおっしゃった。

この話を聞いた時、物語の中の、率先して二つ目の雪だるま作りに
とりかかってくれた優しい父親が、本当は、子どもと遊ぶことなど
全く無い厳しい父親だったのではないか、という想像が湧き上がった。
だからこそ、“私”は、ごみや落ち葉をくっつけるな、とは言えなかったし、
突然の父親の行動は、子ども達を感動させ、物語にまで発展したのではないか、と。

普段、これほど真剣に他人の感想を聞いたことがなかった。
集まった皆で本を読み、その感想に耳を傾けることで、
一人で読んだときは、あっさりとした何と言うことも無い、と思っていた
本が、とても深みのあるしみじみとした物語に変わっていった。

これぞ、佐藤さんがおっしゃた、
様々な異質なものがくっついて、響きあうことで、
予想できない面白いものが生まれる、というアニマシオンの効果なのだろうか。

う〜ん、みごとにはまってしまった。くやしいくらいだ。

ちなみに、おちゃめな佐藤さん(スミマセン)、
私を見てこういわれた。
「ブログ拝見してると、もっとコワイ感じの方かと思ってた」

いえいえ、気が弱くて、小心ものなんです。
それを隣で聞いていた、フレディさんと娘はもちろん、
「うんうん」と相槌を打っていました。本当に!



 
posted by Helenaヘレナ at 15:48| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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