2006年05月28日

Happy Birth Day to Me

Happy Birth Day to Me!
誰も言ってくれないので、自分で言ってみた。

本当は、娘が盛大なバースディパーティを
催してくれるはずだったのだ。
ところが、一昨日水ぼうそうと腸かんぼうで
ダウンしてしまった。
「ママのお誕生日までには・・・」と
うわごとのように繰り返していた。
ありがとう。

ケーキもロウソクもないが、本はある。

バースディ

「バースディ・ストーリーズ」(村上春樹 編訳 中央公論社)

今から3年ほど前に自分で買った。
誕生日に買ったわけではない。
でも、3年後の誕生日の今日、なんとなく読みたくなって
引っ張り出してきた。

装丁がいい。
この表紙を見ているだけで、祝福されている気がする。

中には、村上春樹さんが訳した誕生日をめぐる11の物語が収められている。
小学校に勤務する前、私は大人の小説しか読まなかった。
どちらかというと日本の作家が書いたものより、
外国の作家の翻訳ものが好きだった。
ここに収められている、イーサン・ケイニンとか、ポール・セローとか
レイモンド・カーヴァーの作品もよく読んだ。
訳者としては、村上春樹さんより、柴田元幸さんの方が好きだったけれど。

訳者のあとがきにも書かれているが、
誕生日をめぐる物語といってもハッピーな話はほとんどない。
そこに書かれているのは、やりきれないような孤独や、ほろ苦い思い出、
また、なぜ誕生日にわざわざこんな悲惨な出来事に見舞われなければ
ならないのだろう、と思うような話すらある。

子どもの頃は、誕生日が成長を確認する日であり、
希望に満ちた未来とともに皆に祝われるのに対し、
大人のそれは、「また年をとってしまった」確認でしかなく、
思い通りにならないことの多い人生を、また今後も
続けていかなければならない、という苦い思いにとらわれるから
だろうか。

11の物語の中で私が、一番印象的だったのは
ラッセル・バンクスの「ムーア人」である。
50代の男性である“私”は、雪のふるしきるある夜、行きつけの
レストラン・バーに仲間と一杯やりに入る。
客は他に、今日が80歳の誕生日という老女と、それを祝っている家族だけ。
“私”は、その老女に見覚えがあるのだが、誰なのかわからない。
閉店になり、帰ろうとする“私”をその老女が引き止める。
そして“私”はすべてを鮮やかに思い出す。
その老女が、20代の頃の情事の相手だったことに。

まだ世間を知らない20歳そこそこの青年と、
酸いも甘いもしりつくした世慣れた50歳の女性の情事。
そこに果たして“愛”と呼べるような思いがあったかすら疑問だが、
30年後に再会した二人は、優しい嘘と昔が蘇るようなキスと抱擁を交わす。
老女を家に送り届け、降りしきる雪の中、車を運転しながら
“私”は泣き出すのを懸命にこらえる。

人生の晩年を迎えた二人の再会。
でも後に残るのは苦さではなく、
心も身体もほんのりとした暖かさに包まれるような優しさだった。
人生まだまだ捨てたものじゃない。
良き日々と同じくらい悪い日々を重ねて、
いつか私もこんな優しい再会に恵まれたいー
そんな祈りをこめてこの物語を私の誕生日に贈ろうと思う。

Happy Birth Day to Me!





posted by Helenaヘレナ at 13:30| Comment(8) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
お誕生日おめでとうございます♪
娘さんが祝ってくれるというその気持ちだけでも嬉しいものですよね。
『バースディ・ストーリーズ』、読んだことがありませんが、誕生日にふさわしいタイトルの本ですね。機会があれば手に取りたいと思います。
子どものころは楽しみで仕方なかった誕生日、大人になってなってなりきってしまうと「また年をとった」と感じることがあるものですが、祝ってくれる人がいるというのはやっぱり嬉しいものであるし、特別な気がします。
ヘレナさん、おめでとうございます♪
Posted by kmy at 2006年05月28日 19:14
 楽しくってためになるヘレナさんのブログいつも拝見させて頂いています。(TVドラマより見逃せない‥)
 リボンをかけてぇ〜プレゼントォ〜♪ お誕生日おめでとうございま−す。
娘さん早く治るといいですね。今日は、全国のヘレナファンの方々がきっと『おめでとうーッ』と言ってると思いますよ。娘さんが元気になったらもう1回誕生日をしたらいいです。もちろん、年取るのは1才だけ‥これからも元気で頑張ってください。
Posted by 田舎の司書もどき at 2006年05月28日 22:49
kmyさん、ありがとうございます!!
お祝いの言葉、とっても嬉しい!です。
「バースディ・ストーリーズ」はとても良いですよ。
kmyさんのブログを拝見していると、ドイツの作家がお好きなのかなあ、と感じたのですが、
ドイツの作家の作品も収められています。
おっしゃるように、誕生日はクリスマスやバレンタインデーと違って、
その人だけの特別な祝祭という気がします。
年をとればとるほど、大切に祝いたいですね。
Posted by Helenaヘレナ at 2006年05月29日 09:33
「田舎の司書もどき」さま、ありがとうございます。
昨日は、娘の不調でさすがに滅入ってしまい、ちょっと気弱な記事になってしまいましたが、
励まされました。
嬉しい!です。元気が出ます!
「田舎の司書もどき」というハンドルネーム、非常に共感がもてます。
だって、私と同じなんだもの。
「田舎」も「司書もどき」も。
お互い元気で頑張りましょう!!
これからも、また寄っていただけると嬉しいです。
Posted by Helenaヘレナ at 2006年05月29日 09:40
<人生まだまだ捨てたものじゃない。
良き日々と同じくらい悪い日々を重ねて>

この二行を読んでいて 「嫌われ松子の生涯」という映画を思い出さずには いられなかったので書きます。まだ記憶が鮮明なうちに 何かに書きとめておかないと忘れてしまう。そんな、言の葉たちのように「いれかわり立ち代り舞い散る恋愛」に彩られて 松子さんは、待つ女でもあった。
通常の人が送る人生より、数倍つらく、割りにあわない人生を生きてる松子さんが 実は、とっても愛されてた。だれから? 神様のような松子さんは、多くの人々の記憶の中で愛されながら行き続ける。
 その程度にしか書けません。あとは 見てのあ楽しみ。

Posted by 佐藤 美智代 at 2006年05月29日 22:26
「嫌われ松子の生涯」、興味あったんです。
どんな話なのかな、と。
「嫌われ」というのだから、罪深いイヤな女なのだろうか、とか考えました。
佐藤さんの文章からは、可愛いくて運が悪い女、
という印象が浮かび上がってきます。
これは、やはり手にとってみなくてはいけませんね。
Posted by Helenaヘレナ at 2006年05月30日 09:25
遅ればせながらおめでとう!!
誕生日、もうおめでたくもないと思ってから何年経つでしょう。
もうあまり生きていたくない・・と思い始めて何年になるのか?
まだまだあなたはこれから!おめでとう!!ですよ。
Posted by ミーシャ at 2006年05月31日 21:25
ミーシャさん、ありがとう!
でも、何を言っているのですか!?
ミーシャさんと同じ仕事をしていた時、
私はいつも動揺し、そして感動していました。
私もやらなきゃ・・と。
こんな風に思える相手にまだ巡りあえていません。ミーシャさんが、花を育てたり、料理を作ったりするのは、旺盛な生命力のなせる技だと思います。
Posted by Helenaヘレナ at 2006年06月01日 14:40
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