2006年05月30日

チェスを指す少女

“チェスを指す少女”というと、バルデユスの絵画なみに優美な感じがするが、
現実にはそれほどでもない。
もちろんご本人達の姿形は優美そのもの。
しかし、言動がおっさんくさい!

「ねえ、せんせい、コイツでコイツ取れる?」
「強いやつからつぶしていかないとさ」
「ちょっと、早くやってくれる?」

縁台で将棋を指している姉御という趣。

最近、3年生の女の子達にチェスがちょっとしたブームなのだ。
チェスは私が図書室に持ち込んだ。
昨年度までは、高学年の男の子がよくやっていた。
チェスは、コマの種類が多く、それぞれ違う動きをするので、
小さい子たちには、ちょっと難しいかな、と思ったのだが、
興味深そうに眺めていたので、「やってみる?」と誘ってみた。
それぞれのコマの動きを教え、何戦か試しにやらせると、
その内自分たちでやるようになった。

もちろんまだ3年生なので、すぐには動きが覚えられず、
しょっちゅう「せんせ〜い、これ取れる?」とお声がかかる。

この何日かは、決まって二人の女の子が対戦している。
その周りを、色んな学年の子が男女を問わず取り囲み、横から口を出す。
でも、試合をするのは決まってその二人。

一対一でする勝負だから、負けると当然悔しい。
大人でも悔しくて、コノヤローと思うくらいである。
負けるのがいやな子、勝負事が嫌いな子は、こういうゲームはできない。
感心したのは、この二人の少女が、
そういう悔しい気持ちを上手くコントロールしていることである。
二人とも、自立心旺盛というか、いい意味で気が強い。

今日も色白で可憐な女の子が、
「ねえ、アリイ、今度先生とやってみなよ。
私この前、アリイが途中で帰った時、続きを先生とやったんだけど、
負けちゃった。かなり強いよ」

いや、大人げないとは思ったんだけど、
勝負の厳しさを教えるのも大事だと思って・・・
なんて、ホントはムキになってたんです。はい。

ほぼ互角の腕前の二人。
なかなかいい試合をしてるじゃない、と思っていたのだが・・。
図書委員の子とつかの間話をした後、ふと見ると、
あの可憐な女の子がうつむいている。
ボーイッシュで姉御肌のアリイも、こわばった表情で押し黙っている。
そばでずっと観戦していた、同じ学年の男の子も、
そしてその子が抱いていたオランウータンのぬいぐるみボナちゃんも
沈黙を守っている(ボナは当然か・・)。
その内、女の子が静かに泣き出した。

見かねて、そばに行き、「どうしたの?」と声をかけるが、
誰も答えない。
「ケンカしちゃったの?だめだよ。チェスでケンカしちゃ。
遊びなんだから。もっと気軽に考えて」
そう言って、バカなことを言った、と思った。
子どもがケンカするのは、殆ど遊んでいる時だ。
彼らには遊びの時間が生活の大半を占めている。
仕事が中心の大人とは違う。

「今日はもう、やめようか」下校の時間が近づいていた。
アリイは固い表情のまま頷き、一人でコマを片付け始めた。
「また、来てくれる?」頷くアリイ。
「またチェスで遊んでね。〇ちゃんと一緒に」
〇ちゃんというのは、泣いている女の子だ。
アリイは同じ表情のまま、頷いてくれた。優しい子だ。

後に残った〇ちゃんは、赤い目で黙ったままだった。
アリイに言ったのと同じことを言うと、
やっぱりコックリ頷いた。

よくあることかもしれないが、やっぱり気になる。
これで、チェスをキライにならなければいいのだが。
それでも、やはり二人の態度は立派だと思う。

私なんか、子どもの頃、家族でトランプをして、負けて、
何度、札をぶちまけ大泣きしたことか。
「ヘレナとはもう二度とトランプはやらん!」
父が激怒してそう言ったのを覚えている。
posted by Helenaヘレナ at 17:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 図書室 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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